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コラム

2024年04月01日

松寺直樹医師ドクターリレーコラム「子宮頸がんは予防できる!」

子宮頸がんは予防できる! 産婦人科医師 松寺 直樹

 日本での HPV ワクチン接種は 2010 年から約 3 年間、対象年齢(小学 6 年生から高校 1 年生)の 70%の方に公費接種が行われていました。しかし 2013 年からは副反応と見られる種々の現象がメディアで報道され、積極的接種勧奨が取り消しとなり、接種を希望する方は激減しました。

 その後も容易にはワクチン接種再開には至りませんでしたが、日本産婦人科学会、日本小児科学会など各学会、各団体、政府の後押しがあり、ようやく 2022 年 4 月から HPV ワクチン接種の積極的勧奨が再開されました。

 しかしながら、最近の報告では対象年齢の HPV ワクチン接種率は 25%前後にとどまり、後で述べるキャッチアップ接種に至っては 10%前後にとどまっています。ワクチン接種率の低迷の理由はいくつかあると思いますが、1 つはワクチンの有効性や価値が周知されていないことがあげられます。接種開始が小学 6 年生からになるため、本人よりもその保護者世代を中心に理解をしていただく必要があります。

1.)HPV(ヒトパピローマウィルス)とはなんですか?
 HPV には約 200 種類のタイプがあり、良性のものは疣(いぼ)の原因となったり、外陰部では尖形コンジローマを発症させたりします。ハイリスクに分類されるタイプが数十あり、それらは一過性感染では問題ないのですが、持続感染があると発ガンに関与します。子宮頸癌の発症原因はハイリスク HPV の持続感染が原因となります。
感染のきっかけは性交渉です。口唇性交や肛門性交も HPV 関連癌の原因となります。HPV は
子供にできる疣(いぼ)のウィルスであり、ハイリスク HPV も特定の人だけが持つものではなく、日常に接触しうるものなのです。性交渉の経験があれば HPV の感染罹患が一定にあるため、性交渉のある前の年代層が接種対象となっています。

2.)HPV ワクチンについて
 旧来の 2 価、4 価 HPV ワクチンにはハイリスクタイプのうち HPV16 型と HPV18 型の感染を予防する効果があったため、ワクチン接種で 60%以上子宮頸癌の発症予防効果があります。2021年に日本で発売された 9 価 HPV ワクチン(商品名 シルガード 9)は HPV16 型、HPV18 型に加えて、さらに 5 つのハイリスク HPV タイプの感染を予防できるため、90%以上の子宮頸癌発症の予防効果があります。したがって、ワクチン接種をご検討する場合は、シルガード 9 を指定して接種を受けられるとよいでしょう。現在の定期接種またキャッチアップ接種の対象の方も、シルガード 9 を選ぶことができます。

性交渉の経験がないうちの接種が望ましいですが、性交渉が既にあっても早い年代であれば、既感染のタイプ以外の HPV の免疫が獲得できるので同様に有効と考えられます。ワクチンが広く普及すれば、子宮頸癌だけでなく、HPV 関連癌である外陰癌、中咽頭癌、肺癌、肛門癌なども減少するとされています。ワクチン先進国ではローティーンの男女ともに接種を行っている国も増えています。対象年齢のお子様の保護者には、将来の子宮頸がんのリスクが格段に減少することから接種を希望されることを強くお勧めします。

3.)キャッチアップ接種とは?
 不幸にも公的な接種が中断された期間にワクチン接種を受けられなかった世代のために、H9年から H19 年生まれの方を対象に公費で接種が受けられる制度です。R7年 3 月までですのでこの期間中に受けられることをお勧めします。ご不明の点については各市町村のホームページにご案内されています。

 今回このような機会をいただき、HPV ワクチンについて紹介いたしました。ワクチンを接種することで子宮頸癌は予防できます。今後とも HPV ワクチンの普及に努め、子宮がん検診でも早期発見に寄与したいと考えます。与したいと考えます。

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