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コラム

2023年08月01日

下出哲弘医師ドクターリレーコラム『健康診断で肝臓の数値が高いことに気付いたら?』

『健康診断で肝臓の数値が高いことに気付いたら?』
北陸予防医学協会 内科医師 下出哲弘

「うわっ、肝臓の数値が高めに出ているな。どうしようか? 病院に行こうか?」健康診断の結果の通知を見て、こんな想いが頭をよぎった経験はありませんか?
あなたのその直感的な感覚はとても大切です。

つい最近、2023 年 6 月 15 日に開催された第 59 回日本肝臓学会総会において、『奈良宣言 2023』が発令されました。
健康診断を含め、血液検査で肝臓のダメージの有無を示す『ALT 値 (= GPT 値)』が 30 U/L を超えたらかかりつけ医などの医療機関への受診をしようという主旨の一般市民へのお知らせです。
『ALT 値(= GPT 値)が 30 U/L を超えている』という状態は、私を含めて、肝臓病の診療に従事する立場の医師にとって、肝臓を傷る原因が何かあると考え、血液検査や超音波検査などでその原因を確かめようとする『きっかけ』となる数値と考えて下さい。
肝臓を傷害する原因は、B 型肝炎ウイルス、C 型肝炎ウイルスなどの種々のウイルス、アルコールやメタボリック症候群による脂肪肝、また、から身を守るための体に備わる免疫のトラブルなど多岐にわたります。

 では、肝臓の数値が高い状態が続くと何がいけないのでしょうか?
肝臓の数値が高い状態が続くということは、肝臓に炎症が持続して起きていることを意味しています。
上記に肝臓を傷害する原因をいくつか挙げましたが、いずれの原因であろうと、炎症が長引くことで肝臓が徐々に壊れて硬くなっていき、挙句の果てには『肝硬変』という状態になってしまいます。
体にとって肝臓は、生きていく上で必須のタンパク質などを作ってくれる『工場』のようなもので非常に大切な役割をしています。
こうした重要な役目をする肝臓が働かなくなった状態が『肝硬変』という状態で、手足がむくむ、お腹が張る、体がかゆい、体が黄色くなるなどの様々な体の不調が出現し、やがては生命に関わる『肝不全』に陥ってしまい、命を助ける手立てがほぼ無くなります。
また、『肝硬変』は、もう一つ生命に係わる重大な合併症である『肝がん』を発症しやすい状態であると考えて下さい。
『肝がん』はあらゆるがんの中でも、治療成績があまり良くない『がん』の 1 つで、不幸な転機をたどる恐ろしい病気です。
『肝がん』には、手術や穿刺治療などの根治的な治療はありますが、その後の経過で再発を繰り返してしまうという非常に厄介な特徴も持っています。
こうした重大な肝臓病にならないためには、肝臓の炎症を持続させないことが重要であり、そのためには、一般市民の皆様一人ひとりが、まず、自分の肝臓の状態が悪くなっていないかどうかに気付き、かかりつけ医などの適切な医療機関で肝臓を傷害する原因を早期に発見する他ありません。

 健康診断の結果の通知で、肝臓の数値が高めに出ていることに気付いているのなら、将来、自分が健康に過ごしている未来予想図を実現させるためにも、近隣の医療機関に積極的に受診しましょう。

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