ビタミン C、バンザイ!
医師 生越 亜希子
ビタミン C は、多くの動物にとって「体内で合成できる物質」だってご存じですか?
マウスでは、体重 1kg あたり 275mg 合成できるようです。50kg だった場合、およそ 14g にあた
ります。すごく多いですね。
残念なことに人間は進化の過程で、ビタミン C の合成能を失いました。大昔のご先祖様は、ビタ
ミン C が豊富な食事をしていたため、自分で作る必要が無くなったと考えられます。人間と同じよ
うにビタミン C を合成できないゴリラは、一日 2〜3g のビタミン C を摂っているそうです。
進化の過程で食事が大きく変わった人間は、現在どれぐらい摂取しているでしょう?日本人の平
均摂取量は、令和元年国民健康・栄養調査結果によると 92mg/日。ゴリラと比較すると少ないです
ね。食事摂取基準として出されている値は、成人推奨量 100mg。これと比べるとそんなに悪くない
ように思います。
他の動物たちと摂取するビタミン C の量の差をどう考えたら、良いのでしょうか。人はビタミン
C に代わる物質を体内で作れるようになったのでしょうか?
ビタミン C はさまざまな役割を持っています。その中で交換が可能な働きは、抗酸化物質として
働く部分でしょうか。他の抗酸化物質が十分にあれば、ビタミン C でなくても補えそうです。『健康
な方の場合』、推奨量を摂れていれば大丈夫ということかなと思います。
健康な方を強調しました。実は病気になったときは、ビタミン C の需要が増えます。病気になっ
たときビタミン C の合成能が高い動物は、さらに多くのビタミン C を作ります。体調に合わせて増
やせるなんて、うらやましいですね。
それでは、病気の時、どのようにビタミン C が活躍するか見ていきましょう。
炎症やストレスが起こると活性酸素が増えます。活性酸素が細胞や組織(臓器)などを傷つけ、症
状が出ます。それを防ぐために出るのが、ストレスや炎症が起こる時に分泌量が増えるホルモンのコ
ルチゾールです。薬で使われるステロイド剤と同じものですね。ステロイド剤の副作用で、高血糖が
有名です。ご存じの方もいらっしゃるでしょう。
コルチゾールの分泌量が増えても高血糖になります。血糖とはブドウ糖のことです。ビタミン C を
作る動物は、ブドウ糖からビタミン C を作ります。そう、コルチゾールの作用で起こる高血糖は、
ビタミン C の合成を増やすためと想像できます。多く作られたビタミン C が活性酸素を消去して、
細胞や組織などを守ります。
さらに、コルチゾールはビタミン C が細胞の中に入れるように、ビタミン C の取り込み口になる
輸送タンパクを増やします。細胞内に入ったビタミン C は、そこでも大活躍です。このようにビタ
ミン C とコルチゾールはとても良いチームワークで働きます。
残念ながら、ビタミン C が合成できない人間はこのメカニズムの恩恵に預かれません。その名残
として高血糖のみが残ったと考えられます。
しかし、人間は科学の知識でこの関係を生かすことができます。コルチゾールが出るような時にビ
タミン C をいつも以上に多く摂ればよいのです。健康診断の結果で炎症反応物質である CRP が高い
人も、ビタミン C を意識して摂取してください。CRP が高い人はビタミン C の血中濃度が低いとい
うデータがあります。活性酸素に対抗する抗酸化力が足りてない状況です。摂ることによって、何と
なくあった疲れが取れたり、肌の状態がよくなったりしてきますよ。
最後に、ビタミン C 消費量を大きくする喫煙、飲酒、激しい運動はほどほどにしましょう。