メンタルヘルス コラム

2019年06月01日

〈 B型肝炎ワクチンのすすめ 〉 下出 哲弘医師

〜 B型肝炎ワクチンのすすめ 〜
                           北陸予防医学協会 下出哲弘
 
 B型肝炎ウイルスは,全世界で約3億5000万人が感染していると言われ,そのうち日本では、約130万から150万人,つまり,約100人に1人が感染していると推定されています.
B型肝炎とは,血液や体液を介して,B型肝炎ウイルスが体の中に入りこみ,肝臓を構成する肝細胞に感染して,その結果,それを異常と認識した白血球が感染した肝細胞を攻撃して,肝臓が徐々に壊れていき,慢性肝炎,肝硬変,更には,肝がんへと進展してしまう病気です.
 
 子供へのB型肝炎ウイルスの感染は,B型肝炎ウイルスに感染した母親から産まれる際に起こる母子感染が一般的ですが,出生後でも,B型肝炎ウイルスを含んだ血液や体液が,皮膚にできたキズなどから体の中に入って感染してしまうことがあります。それ以外にも,保育園での集団感染,相撲やフットボールなどの部活での集団感染,また,父親からの家族内感染も報告されています.この中には,感染経路が不明なものも含まれています.一方で,成人へのB型肝炎ウイルスの感染は,B型肝炎ウイルスに感染しているパートナーとの性交渉による感染です.つまり,性感染症として位置付けが強いです.しかも,自分自身が感染しているとは知らずに,性交渉をしてしまい,B型肝炎ウイルスの感染を拡大させていることもあります.(もし,自分で「B型肝炎に感染しているかも…」と思ったら,保健所に行ってみて下さい.無料でB型肝炎に感染しているか検査してもらえます!なお,HIVなどの他の性感染症の検索も無料です!)
 
 「それじゃあ,B型肝炎ウイルスから,どうやって身を守ればいいの?」という疑問が生じてくるはず! そうした疑問への答えの1つに,B型肝炎ワクチンの接種があります.
 
 B型肝炎ワクチンは,6カ月の間に3回の接種を行うことで,B型肝炎と将来起きうるかもしれない肝がんの発症を予防できるとされています.1回の接種量は,0.25〜0.5mlです.B型肝炎ワクチンの接種は,世界180カ国以上で行われており,ワクチンの中でも最も安全なものの1つです.
 
 B型肝炎ワクチンの接種を受けたほうが良いのは,B型肝炎ウイルスに感染しているお母さんから生まれてくるお子さん,血液や体液と接触しやすい職種に携わる方が挙げられます.前者に関しては,1986年以降,B型肝炎ワクチンの接種を含めたB型肝炎母子感染防止事業により,母子感染は劇的に減少しました.また,こうした方々以外にも,家族内にB型肝炎がいる方,血液透析を受けている方などは,B型肝炎ワクチンの接種を受けることが望ましいと思われます(この場合は,健康保険ではカバーできませんが…).
 
 現在,「B型肝炎ウイルスへの感染は日常生活でも十分起こり得ることだから,全員がB型肝炎ワクチンの接種を行うべきだ!」という考え方が世界の標準的な見解になっています.ユニバーサルワクチネーションといいます.日本においても,そうした考え方に則って,2016年10月から0歳児を対象としたB型肝炎ワクチンの定期接種が開始されました.
 
 B型肝炎ワクチンの接種による,一人ひとりの努力が,B型肝炎ウイルスの拡大を確実に抑止して,B型肝炎ウイルスの撲滅へのカウントダウンを加速させます.「B型肝炎ワクチンを接種してみよう!」と思ったら,まずは,お医者さんへ!!

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