佐賀県における若年者からの胃がん撲滅プロジェクトの紹介
前回、ピロリ菌除菌(胃がんの一次予防)のお話をしましたが今回は佐賀県の取り組みを紹介します。
ピロリ菌除菌治療は、感染から早期で胃粘膜の損傷が少ないうちに実施することが効果的であり、それにより子ども達の将来および次世代の胃がん発症リスクを軽減できると考えられている。そのような中で、新たな胃がん予防の手段として若年者へのピロリ菌感染検査および除菌が一次予防として全国各地で始まっている。
佐賀県では平成28年度から、県内の中学3年生を対象にピロリ検診を開始し、ピロリ菌の感染検査から除菌、除菌判定までを佐賀県からの全額公費助成で行っており、都道府県単位での実施は全国初ということです。このピロリ検診を「未来へ向けた胃がん対策推進事業」と名付けているとのことです。
この取り組みは、胃がんの原因であるピロリ菌を胃がんが発症する前に除菌することで、将来の胃がんを予防することをねらいとしている。また、中学生の時にピロリ菌を除菌してしまうことで、現在の主な感染経路である家族内感染を断ち、将来の自分の子ども達へのピロリ菌感染を阻止することも期待できるとしている。
しかし、若年者への除菌を含めたピロリ検診の安全性については賛否両論があり、今後様々な臨床研究を行うことで本事業の安全性をさらに確立していき、今以上に全国に広げていければと考えていると述べている。
佐賀県は、平成26年における75歳未満の人口10万人当たりの胃がん死亡率がワースト2位であり、この取り組みを継続していければ将来的には胃がんの撲滅も可能であろうと考えている。最終的には本事業が、胃がん撲滅への第一歩となるものと確信していると述べている。
以上のように、青少年期でのピロリ菌除菌も徐々に広まって来ているようです。日本ヘリコバクター学会の「2016改訂版 H.pylori 感染の診断と治療のガイドライン」においても「提言 胃癌予防」として除菌治療を推奨しています。当協会においては職域健診がほとんどであり50歳未満の方も多く、ガイドラインでは50歳未満の成人は胃癌低リスク期とされています。この時期ではヘリコバクター・ピロリ感染検査と胃粘膜萎縮検査を併用すべきである。また、この時期での除菌治療は次世代への感染対策として有効であるとしている。
結論としては、一度はピロリ菌の感染検査(ABC検診等)を受け、ピロリ感染が陽性であれば専門医を受診し内視鏡検査を受けることをお勧めします。
参考文献
1、佐賀県における若年者からの胃がん撲滅プロジェクト、日本ヘリコバクター学会誌Vol.19 No.2
2、2016改訂版H.pylori感染の診断と治療のガイドライン