「また、ストレスチェックの時期が来た」と思っている方々も少なくないのではないでしょうか?ストレスチェックの一つの目的が、いち早く自分でストレス状況に気づき、早期にセルフケアを行う事です。セルフケアとは、ストレスに対する自身の対応能力を高めることです。セルフケアの一つに運動があることを、以前このコラムでお伝えしました(私は今もサーフィンを続けています)。他にも様々な対処方法がありますが、「考え方のクセ」を変えるということもよく言われます。今回は、この「考え方のクセ」について考えてみましょう。
某企業の常態化した高残業や政府の働き方改革などが声高に叫ばれ、仕事に関して「時間」ばかりが注目されていますが、残業を減らしただけではストレスは減らないと誰もが思っているのではないでしょうか。そもそもあなたが仕事を継続できるのはなぜでしょうか?「仕事とは?」と言われて一つの正解はありませんが、以下の二つの考えがあるとしたら、あなたはどちらに近いでしょうか??「仕事とは、自分が果たすべき責任や周囲からの期待に応える機会」?「仕事とは、自分の目標の達成や実現、関心のあることを追及する機会」。私は?、僕は?、俺は時と場合によるな、などと回答は分かれるでしょう。前者を、損失や失敗を極力回避して安心感を得ようとする「予防フォーカス」による動機づけ、後者を、積極的に利益を追って満足感を得ることを志向する「促進フォーカス」による動機づけ、と言う呼び方もあります。いずれも仕事を前向きに成し遂げるために仕事をどう捉えるかの考え方ですが、誰しもその時々で使い分けているのです。ただ、どちらのフォーカスを用いやすいかは個人によって「クセ」があるようです。前者はネガティヴな思考(うまくいかなかったらどうしよう:失敗への不安)に支えられ、後者はポジティヴな思考(うまくいくにちがいない:成功への楽観と熱意)に支えられています。
単純に、ネガティヴ思考は良くなくてポジティヴ思考が望ましいと思われがちですが、仕事に対する動機づけという点では、必ずしもそうではありません。ポジティヴ思考の人は褒められるとより頑張ります。ネガティヴ思考の人は不安をばねにして努力するので、褒められることよりも、批判やダメだしによってこそ、仕事への動機づけが高まる場合もあるわけです。言い換えると、ネガティヴ思考があるからこそ仕事に取り組めて、成果を出せる人もいるということになります。このことは研究でも証明されています。
私は自称チョコレート・ホーリックで、大のチョコレート好きですが、兵庫県三田市の住宅街の一角に、「パティシエ エス・コヤマ」という菓子店があります。この店のオーナーは皆さんもご存知かもしれません。フランスの世界最大級のチョコレートの祭典で、世界最高位を受賞した小山進さんです。彼は自身の著書の中で、心配性を自認していますが、心配には2種類あると言っています。「失敗したらどうしよう」とクヨクヨ悩むだけの心配と「自分には足りないところがある」からと用意周到に準備する心配。彼は後者で、ネガティヴな思考で仕事への動機づけを高め、行動することで不安を解決しています。
同じ仕事に向かっていても、自分自身が用いやすいフォーカスと、上司や同僚が用いやすいフォーカスが異なると、やりにくくなるだろうことは想像できます。でも、ネガティヴな思考とポジティヴな思考は相反するものではなく、相互に補完してくれるものです。自分の思考のクセを知り、改善するべきは改善するだけでなく、周囲の人の思考のクセも意識して、自分のやり方を押し付けないようにすると、お互いに少し仕事がしやすくなるかもしれません。お互い相手を思いやりながら協力して仕事ができれば、ストレスが減少し、チームとしての仕事のパフォーマンスも上がると思うのですが、如何でしょうか。
参考文献:仕事で大切なのは責任か夢か 今城 志保
「心配性」だから世界一になれた 小山 進