メンタルヘルス コラム

2017年05月09日

〈健康へのアプローチ 1〉  生越 亜希子医師

健康へのアプローチ1

人間は一体どのようにすれば健康であり続けられるのでしょうか?
私がずっと模索し、これからもずっと考え続けていくテーマです。

いろいろなものが健康にかかわっています。栄養、体の構造、天候、ストレス、腸内細菌、振動、気の流れ…。もっと多くのものがかかわっていることでしょう。
科学的にまだ解明されてない事は多くありますが、分かっているものにこだわってしまうと遠回りすることも多いのではないかと思います。
自分自身の健康を考えていく上ですべてフリーにして思いをはせるのは楽しいものです。
ただこの場所は医者として書かせていただいているので、今回は栄養について書いきたいと思います。

栄養による健康へのアプローチはオーソモレキュラー療法として徐々に広まっています。「この日本に栄養不足?」と思われる方も多いと思いますが、野菜自体の栄養素の減少や加工品の増加などにより、多くの人が複数の栄養素が足りない状態です。欠乏症といわれるまでになる人はほとんどいませんが、栄養不足の症状と知らずに不調に悩まされている方は多くいらっしゃいます。からだは不足に対応して何とかやりくりしてくれますが、代償できなくなると症状として出てきます。
女性に多い栄養不足は鉄不足。月経、出産、母乳による子育てにより、男性に比べてどんどん鉄が出ていきやすい状況です。貧血がないからと鉄不足の症状がないわけではありません。
貧血がないかどうか判断するのがヘモグロビン。これは赤血球の中にあり、全身に酸素を運ぶという大切な仕事をしています。北陸予防医学協会のヘモグロビンの基準値が男性14〜18g/dl、女性は12〜16g/dlです。男性と女性には基準値の差があります。また、身体に鉄が不足しているかはフェリチンというものを検査します。これは一般的健康診断では検査しません。フェリチンの適正濃度は100〜125ng/mlと言われています(基準値とは違います)
フェリチンが低い方に鉄を補っていくと、まずはヘモグロビンに変化が現れます。
そして、ヘモグロビンが14g/dlに達するとフェリチンの値が上がってくる傾向があります。
これはどういうことでしょう?ヘモグロビンが14g/dlになるとやっとヘモグロビンの合成に鉄を回さなくても良くなり、貯めたり他のことに回したりできるようになると考えられます。この14g/dlという値が男性の基準値下限になっているのは偶然ではないでしょう。
女性の多くは鉄不足の状態です。
鉄不足の症状はたくさんあります。なぜなら、鉄はエネルギー産生、神経伝達物質の産生など重要なミネラルだからです。具体的に挙げるとイライラしやすい、つまらないことにくよくよ、憂鬱になることが多い、頭痛になりやすい、筋肉の痛みが出やすいなどあります。ある雑誌に10代の女の子は男の子より鬱病になる率が高い。女の子の方が男の子よりも社会的な悩みが多いためだと考えられる」ということが書かれていましたが、これまで読んでくださったあなたはどう思いますか?月経の始まった女の子は鉄欠乏がおこり、憂鬱な症状が出やすくなっているのではないか、そんな想像ができますよね。

このようにある視点が加わることで症状の改善法は広がっていきます。
今ある症状も栄養状態を整えると知らないうちになくなっていたということは十分あり得ます。栄養の世界は面白いですよ。

ページトップ