メンタルヘルス コラム

2017年01月05日

〈未病うつには、海?〉  さくらまちハートケアクリニック 荒井秀樹院長(協会顧問)

 うつ病、うつ状態がもたらす社会的損失の大きさが注目されています。今や『うつ』は、日本だけではなく先進諸国のメンタルヘルス上の最優先課題です。『うつ』の中には、重篤な症状があるにもかかわらず医療機関を受診しない人達がいる一方で、何かしら症状があり医療機関を受診するものの、診断基準を満たさない程度の人達もいます。後者を「未病うつ(Non-clinical depression)」と呼ぶことがあります。いずれも医療としての介入が難しいという共通点があります。未病うつの場合、健常と軽症うつ病の中間に位置している状態と言えるので、薬物などによる積極的な治療は躊躇されますが、さりとて放っておいてよいものでもありません。
 
 昨今のストレスチェックでは、この状態の人達は高ストレスと判定される可能性があるので、何かしらのセルフケアの対処方法も知っておく必要があります。セルフケアは多様ですが、未病うつの皆さんには、効果的な運動をお勧めしたいものです。運動が『うつ』に有効な医学的根拠はいくつかありますが、『心=脳』と『身体』の両方に同時に良い効果をもたらします。一般的に、筋トレや短距離走などの無酸素運動ではなく、ランニング、スイミング、サイクリングなどの有酸素運動が良いと言われています。ただ、有酸素運動の欠点は、単調で反復的なものが多く、飽きやすいという点でしょうか。
「肩こりが改善した」「スタイルが良くなった」「ときめく心が戻ってきた」「不安を感じにくくなった」「マイナス思考をしなくなった」「手際がよくなった」こんなことをすべて満たしてくれる運動があったら、是非してみたいと思いませんか?

 実は…、そういうスポーツがあるのです。それは、『サーフィン』です。私は海のない長野県生まれですが、この年になりサーフィンを始めました。そして、上記の効果を実感しています。海という自然の中で自分の体一つでサーフボードを操るということが、体に良い変化を起こします。そして、海という大自然が心=脳に与える影響は、想像を超えたものです。海辺は山よりも健康増進に有益という調査報告もあります。この大自然の中、肌で水や砂を感じることが、脳内の快楽ホルモン(エンドルフィンやセロトニン)の放出を促進してくれるのでしょう。「サーフィン前夜は眠れない」「(雨だろうが冬だろうが)波が気になり海に行くことが待ち遠しい」といった、わくわく感も生まれます。海の中で波に乗ることを考えている間は、他のことは一切考える暇もなく「無」になれます。「今の波は良かったのに…」など過去を悔いている間もありません。そして、大自然に畏敬の念が出てきます。同じ波は二度となく、簡単に上達しないサーフィンは私たちから目標を奪いませんから長く続けることができます。
 サーフィンが、うつ、注意欠陥多動性障害(ADHD)といった問題を抱える子供、そして傷ついた大人(PTSD)等に良い影響を与えることが知られ、サーフセラピーなるものが海外では注目されています。皆さん、未病を病気にしないためにも、少しでも関心があればサーフィンをしてみてください。きっと、メンタル面の変化を感じると思います。富山の街は海までとても近いという恵まれたロケーションでもあるのですから。

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