胃がんの発生にはピロリ菌感染および、それによって起こる慢性萎縮性胃炎が密接にかかわっており、ピロリ菌が関与しない胃がんは極まれと考えられます。したがって、胃がんの発生を予防するためにはまず、ピロリ菌感染の有無および胃粘膜の萎縮の程度を検査する必要があります。これは、ABC検診と言い、胃がピロリ菌に感染しているかどうかを調べるピロリ菌(Hp)抗体検査と、胃粘膜の萎縮具合を調べるペプシノゲン(PG)検査の2種類の血液検査を行い、Hp抗体(-),PG(-)をA群、Hp抗体(+),PG(-)をB群、PG(+)をC群とし、胃がんリスクを層別化するものです。
このABC検診でB群およびC群と判定された方で、ここ1年以内に上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受けていない場合は、消化器内視鏡専門医による胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
胃・十二指腸潰瘍や胃がんが無いことを確認してもらうことはもちろんですが、胃の萎縮の程度も判定してもらいピロリ菌除菌についても相談しましょう。
胃がん発生の危険性が極めて高い早期胃がんの内視鏡的治療後の胃においてさえ、除菌により胃がんの発生率が1/3に低下したと報告されています。
ここで、がんの一次予防について少し解説します。
一次予防とは、がんの原因そのものを除いてがんが発生しないようにすることです。例えば、肺がん、咽頭がん、膀胱がんの一次予防としての禁煙。また、感染症に基づくがんとしてB型およびC型肝炎ウイルスによる肝がん、パピローマウイルスによる子宮頸がん、ピロリ菌による胃がんが挙げられます。これらのがんは、原因がわかっているわけですから一次予防が可能です。一方、胃がん検診などは二次予防と言い、早期発見、早期治療ということです。原因の明らかながんに対しては一次予防がより有効と考えられます。胃がんに関しては、一次予防(ピロリ菌の除菌)と二次予防(検診、早期発見、早期治療)のコンビネーションが重要であるといわれています。ところで、2013年2月にヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が保険適用となり、わが国でのヘリコバクター・ピロリ除菌人口が増大し、ピロリ菌を撲滅して胃癌予防に結びつけるための基盤が整ったと考えられます。
日本ヘリコバクター学会は2016年に「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン」を改訂し、胃癌予防のあり方についての提言も記載されており、除菌治療をより一層推奨しています。
当協会では、上部消化管内視鏡検査および胃X線検査を胃がん検診であるとともにピロリ感染胃炎検診と認識し、ピロリ菌除菌の説明、勧奨を行っています。また、当協会には日本消化器内視鏡学会認定技師が5名在籍しており、丁寧な説明を心がけています。
不明な点がありましたら当協会にご連絡ください。