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研究・学会活動

2023年07月11日

日本人間ドック学会誌『人間ドック』第38巻第1号に掲載されました。

〜 論文の紹介 〜
 B型肝炎やC型肝炎を主としてウイルス性肝炎は,急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変や肝細胞がんなどの様々な肝臓病をもたらし,生命にも影響を及ぼす重大な疾患です.本邦において,2019年度のウイルス性肝炎に関連した報告では,一般人の中に,約45万人のB型肝炎の罹患者,約22万人のC型肝炎の罹患者が未だ診断されない状態で潜伏していることが推計されています.職域検診や人間ドック・任意型検診における肝炎ウイルス検診は,こうした未だ診断されていないウイルス性肝炎の罹患者を拾い上げる重要な契機になります.
 今回,当健診施設において,肝炎ウイルス検診を受けた受診者を対象とした臨床研究を行いました.研究の中で,健康診断の受診者の中で,肝炎ウイルス検診をより積極的に受けた方が良い受診者を絞り込む方法について検討しました.その結果,肝臓の硬さを示す指標である『FIB-4 インデックス』という数値が1.30以上の受診者は,より肝炎ウイルス検診を受けることが望ましいという結論を得ました.『FIB-4 インデックス』は,下記にも示しますが,普段の健康診断の血液検査でも測定されている比較的簡単な検査項目で計算できる手軽な指標です.『FIB-4 インデックス』の計算方法については,お手元のパソコンやスマートフォンで『肝臓検査.com』という言葉を検索してみて下さい.『肝臓検査.com』は,一般の方でも気軽にアクセスできるサイトであり,サイト内には当該の数値を代入すると,自動的に計算してくれるツールが備わっています.もし,ご自身の健康診断の結果に記載されている数値を活用して,計算で得られたFIB-4 インデックスの数値が1.30以上であるならば,是非,肝炎ウイルス検診を受検しましょう.

FIB-4 インデックスについて
 皆さんの『年齢』に加えて,健康診断の結果に記載されている,『血小板数』,『AST(= GOT)』,『ALT(= GPT)』という計4つの項目から成り立つ指標であり,肝臓の硬さを表す指標です.ウイルス性肝炎のみならず,アルコール,肥満や糖尿病などの種々の原因で,肝臓に炎症が続くと,肝臓が徐々に硬くなっていきます.FIB-4 インデックスは,身近に測定される血液検査項目で,そうした肝臓の硬さを予測する指標と考えて下さい.(注: 健康診断の種類によっては,血小板数が測定されていない方もおられます)

北陸予防医学協会 内科 下出哲弘

論文:
下出哲弘,松江泰弘,丸岡秀範,王紅兵,山上孝司,水腰英四郎,永田義毅: 健診受診者における肝炎ウイルス検査陽性者のスクリーニング指標としてのFIB-4 indexの検討.人間ドック2023; 38: 53-62.


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